アラスカ南東部のトンガス国立森林公園と姉妹関係にあるチュガッチ国立森林公園は、面積はトンガス国立森林公園の3分の1程度ですが、それでも米国内第2の広さをもつ国立森林公園です。ここでは森林、河川、湖、山岳、氷河などの素晴らしい自然景観を楽しむことができます。ニューハンプシャー州にほぼ匹敵する面積をもつチュガッチは、国有森林の中でも特に地勢的な特徴が多様です。広さ238万ヘクタールのチュガッチは、3つの特徴的な景観地帯を横断するように広がっています。プリンス・ウィリアム湾を超えてキナイ半島東部へ延び、カッパーリバー・デルタを囲むガルフ・コーストを含み、さらに東のベーリング氷河まで達します。
人の行き来する道やハイウェイを離れてハイキングを楽しみたい方には、この森林公園で目にする様々な野生動物の姿は大きな魅力です。森の各地にはブラックベアやブラウンベアが生息し、ツンドラ斜面を掘り分けたり、潮間帯でエサを探したりしています。夏も終わりに近づく頃には、渓流や河川では産卵を終えたサーモンにありついているクマたちの姿を見ることができるかもしれません。巨大なムースはキナイ半島やカッパーリバー・デルタ地帯に生息しています。ドールシープはキナイ半島の山腹に、そしてマウンテンゴートはプリンス・ウィリアム湾の急峻な斜面、カッパーリバー・デルタ、時にはポーテージ・バレーの上などで見ることができます。プリンス・ウィリアム湾でボートやカヤックを楽しむ人には、ドール・ネズミイルカやゴマフアザラシ、ラッコ、トド、シャチ、ザトウクジラなどとの出会いがあるかもしれません。
チュガッチ国立森林公園は、渡り鳥や留鳥あわせて214種類もの鳥たちの楽園です。ミツユビカモメなどの海鳥は数千羽単位で崖の斜面に営巣しています。ライチョウは高山ツンドラを動き回り、ハクトウワシは海岸線の枝で羽を休め、カンムリカケスは森の下生えで餌を探しています。これまでに北米で知られている最大のナキハクチョウの群れや、シジュウカラガンの群れすべてがカッパーリバー・デルタを聖域としています。留鳥として営巣する水鳥に加えて、春や秋になるとさらに何千羽もの渡り鳥がやって来ます。
チュガッチでは様々なフィッシングが満喫できます。ホリー・バーデンや北極カワヒメマス、5種類のパシフィック・サーモンすべてが釣れるのはもちろん、ニジマス、レイクトラウト、カットスロート・トラウトなどのフィッシングもお望みのままです。釣りポイントへも簡単に行くことができます。道路脇の湖や川は至るところにあり、ボート無しでもフィッシングでトロフィー狙いができるチャンスも豊富です。チュガッチで最も良く知られる釣り場はレッドサーモンが遡上するロシアン・リバーです。7月~8月のシーズンともなれば、ここではアングラーが土手の上で肘を突き合わせるように立ち並び、夕食のごちそうをものにしようと糸を垂れています。
チュガッチは氷河が山から直接海へこぼれ落ちるという、世界でも数少ない場所のひとつです。その源となっているバグリー・アイスフィールドと合わせると、ベーリング氷河の面積はスイスの国土より大きいのです。コロンビア氷河は世界最大の潮間氷河です。一方、ポーテージ氷河とそのベギーチ・ボッグズ・ビジターセンターは、アラスカを訪れる人たちにとって最も人気のある場所のひとつです。
Facilities
施設
チュガッチ国立森林公園、中でもキナイ半島は、大多数のアラスカ州民とってアウトドアの遊び場のような存在で、毎年100万人以上の人々がこの地を訪れます。森林公園全体には42か所のUSフォレスト・サービス(米国農務省林野局)が運営するレクリエーション用レンタル・キャビンが点在し、そのほとんどへは徒歩または水上飛行機で行くことが可能です。キナイ半島の沿道には、14か所のUSFS(林野局)運営キャンプ場があり、戦没者追悼記念日(5月の最終月曜日)から労働記念日(9月の最初の月曜日)まで、夏のシーズン期間中はここを訪れるトレーラーが途絶えることはありません。
この国立森林公園には総延長320㎞以上のトレイルが広がり、ハイカーやマウンテン・バイカー達のパラダイスとなっています。ジョンソン・パス・トレイル、レザレクション・パス・トレイル、ロシアン・レイクス・トレイル、レザレクション・リバー・トレイル、プリムローズ&ロスト・レイク・トレイル・システムなど、最も人気の高いトレイルがキナイ半島に集中しています。これらの全てのトレイルで、夜通しのトレッキングを経験することも可能です。また、レザレクション・パス、ロシアン・レイクス、レザレクション・リバーのトレイルはホープからスワードに抜ける112㎞のトレッキングと繋げることができます。チュガッチ国立森林公園では、園内のどこででも野外キャンプをすることが許されています。ボート遊び、フィッシング、カヤックをはじめ、キナイ川やキナイ半島のシックスマイル・クリークなどといった公園内の川やクリークでは、ラフティング・ツアーにも参加できます。
スワード・ハイウェイを経由してアンカレジの南へ向かうと、ベギッチ‐ボッグス・ビジター・センター(907-783-2326)が見えてきます。この壮大な施設は、元々ポーテージ氷河の景観が良く見えるようにデザインされたものですが、皮肉なことに、1994年までには氷河が後退してセンターの展望デッキや望遠鏡では見ることができなくなってしまいました。それでも施設内のハイテクな野生動物の展示や素晴らしい映画を楽しむことができるため、人気スポットの一つとなっています。また、ポーテージ湖のクルーズに参加したり、ポーテージ・パス・トレイルをハイキングして氷河の眺めを楽しんだりするのもお勧めです。
2007年には、チュガッチ国立森林公園のUSFS(林野局)はアラスカ鉄道会社と提携、米国内ではここでしか体験することができない鉄道による氷河トリップの販売を発表しました。これには特別の列車が使用され、乗客はスペンサー・ホイッスル・ストップで列車を降り、レンジャーのガイドのもと、2.5㎞の路を歩いた後、スペンサー・レイクとスペンサー氷河の目を見張るような眺望を楽しむという趣向です。
Fees
入園料
チュガッチ国立森林公園内のほとんどの場所は入園料も許可証も不要です。ベギッチ‐ボッグス・ビジター・センターに入場するには、入場料が必要となります。また、ほとんどのキャンプ場、USFS運営のキャビンでは一泊毎の料金が必要になります。これらのキャビンと、一部のキャンプ場はナショナル・リクリエーション・リザベーション・サービス(877-444-6777)で予約が可能です。スペンサー・ホイッスル・ストップ・トレーンの切符はアラスカ鉄道(800-544-0552)で販売しています。
Accessibility
アクセス
チュガッチ国立森林公園には陸路、水路、空路、全てを利用することができます。スワード・ハイウェイとスターリング・ハイウェイがキナイ半島における主要道路となります。コルドバからはカッパー・リバー・ハイウェイ経由でカッパー・リバー・デルタ、チャイルズ氷河沿いのトレイル、キャンプ場その他の施設に行くことができます。ウィッティア、バルディーズでは、コロンビア氷河やプリンス・ウィリアム・サウンドの国有林を観察するボート・クルーズに参加することが可能です。また、スワード、コルドバでは、チャーター会社がUSFS運営のキャビンまで水上飛行機を運航しています。