そびえ立つ花崗岩の尖頂や雪をいただく高峰を擁するデナリ国立公園・自然保護区は、256kmのアラスカ山脈をまたいで広がっており、また非常に高い標高までカバーしているため雲に隠れてしまうことも多い地域です。このスカイラインの支配者のようにそびえるのが北米の最高峰、マッキンリー山です。6194mの高みにそびえるマッキンリーは、アラスカでも最も素晴らしい自然景観のひとつです。
しかし、デナリ国立公園を特別な場所にしているのはこの山だけではありません。同公園はオオヤマネコ、マーモットやドールシープからキツネやカンジキウサギまで37種類の哺乳類の生息地となっているほか、雄姿で知られるイヌワシを含む130種類もの鳥類も確認されています。中でも観光客の多くは特に次の4種類の動物がお目当てです:ムース、カリブー、オオカミ、そして人気のグリズリーベアです。米国内の大半の国立公園・保護区と違って、このデナリ国立公園を探訪する人はバックパックを背負って野生生物を見に行く必要はありません。つまり、テントの中で一睡もせずに野生動物を待ちかまえる人たちだけが、これらの偉大な動物が自然の生息地の中で自由に動き回るのを目撃できる「一生に一度」のチャンスをものにできる、ということではないのです。
実際、ここを訪れる人たちは団体でやって来ます。この公園は年間432,000人もの観光客が訪れる人気の場所なのです。ただ一本通っている道路を車両通行禁止にするなど、ここの公園管理局(NPS)は長年にわたってユニークな来訪者管理策を採用してきました。その結果、デナリ国立公園の自然は20年前と変わらぬ状態で保たれています。入口の外見こそ変わりましたが、内部は全く変わっていません・・・公園が1917年にオープンした当時と同じようにブラウンベアがツンドラの尾根を動き回っているさまはスリル満点です。
現在公園地域となっている荒野で、ネイティブのアサバスカンの人々は昔から移動しながら狩猟生活を送ってきましたが、最初の定住集落ができたのはゴールドラッシュによってカンティシュナの町ができた1905年のことでした。その1年後、ナチュラリストで著名なハンターでもあったチャールズ・シェルドンは、この土地の美しさに驚嘆し、同時に金鉱夫や大物狙いのハンターたちが自然を荒らし放題に荒らすことに深く胸を痛めました。国立公園用の境界を定めるため、シェルドンはガイドのハリー・カーステンを伴って1907年にこの地域を再び訪れ、調査旅行をしました。シェルドンは見事成功をおさめました。なぜならば、カーステンを初代管理責任者として、この地域が1917年にマッキンリー山国立公園に指定されたからです。また1980年にアラスカ国有地保護法が制定されたのを受け、同公園の面積は240万ヘクタール以上にまで拡大され、名前もデナリ国立公園・自然保護区と改称されました。今日、デナリはマサチューセッツ州より少し大きい面積をもち、アラスカを代表する素晴らしい観光資源の一つとされています。
Facilities
施設
デナリ国立公園はジョージ・パークス・ハイウェイの379㎞地点にあり、その玄関口となるエリアには、ライリー・クリーク・キャンプ場、アラスカ鉄道駅、デナリ観光局、ミュリー科学学習センター、ウィルダネス・アクセス・センター(WAC)、キャンプ場予約センターなど様々な施設があり、公園内における拠点となっています。公園入口からは、デナリの中心部を縦断するように147㎞にわたってパーク・ロードが西に延びており、沿道にはイールソン・ビジター・センターや5つのキャンプ場があります。そのキャンプ場の一つであるワンダー・レイク・キャンプ場では、晴れた日に湖に映るマッキンリー山の姿を楽しむこともできます。 このパーク・ロードの終点となるのが、かつては金鉱集落でカンティシュナです。今では、ここにキャンプ用のロッジが点在しています。
デナリ国立公園に車で訪れる場合は、パーク・ロードの22.4㎞地点にあるサベージ・リバーに沿った駐車場エリアまで乗り入れが可能です。その後、公園のシャトル・バス・システムを利用してデナリ国立公園を満喫することができます。シャトル・バスの出発地点はWAC、始発は午前5時30分です。
通常シャトル・バスはワンダー・レイクまで運行しており、ここではアラスカでも1~2位を争う野生動物の観察を体験することができます。日帰りでハイキングを楽しむ場合は、パーク・ロードの沿道ならどこでもバスを乗り降りすることが可能で、ハイキングを終えた後またバスを停めて公園入口に戻ってくることができます。キャンプ客用には、また別のバスが運行されています。
デナリ国立公園は、喧騒を逃れて奥地の自然に入り込み、本当のアラスカを体験できる良い機会を与えてくれます。公園の厳しい制約と許可証制度のため、バックパッカーはほんの数日間しか滞在することはできませんが、野生の自然を独り占めにして歩き回り、キャンプを楽しむことができます。 公園にはトレイル(道)と呼べるものはほとんどありません。ハイキングの場合は、砂利だらけの川床やツンドラの尾根など原野のクロス・カントリー歩きが中心となりますが、それもまた1つの醍醐味です。
デナリ国立公園またはその周辺でのアクティビティとしては、夏の間も実施している犬ゾリ体験やネナナ川でのラフティング、パーク・ロードのマウンテン・バイク、遊覧飛行などがあります。タルキートナの町では、国立公園サービス(NPS)が、山岳レンジャー・ステーション(907-733-2231)を設置しており、北米の最高峰マッキンリーを目指して世界中から訪れる登山者の対応にあたっています。また、冬の期間でも、犬ゾリ・ツアー、クロス・カントリー・スキー、スノーモービル、オーロラ観察など、様々なアクティビティを楽しむことができます。
Fees
入園料
デナリ国立公園への入園は有料となります。お一人様料金または車両一台あたりの料金となっており、7日間有効です。 キャンプ、シャトル・バス利用、登山許可証には別途料金が必要です。
Accessibility
アクセス
デナリ国立公園に行くにはジョージ・パークス・ハイウェイから車で入るか、アンカレジあるいはフェアバンクスからアラスカ鉄道を利用することになります。公園の玄関口には、ヒーリー、カントウェル、タルキートナなどの集落があります。夏のシーズン中は、アンカレジ、フェアバンクスから鉄道に加えて民間のバスやバンなどの交通機関が利用可能となります。