米国最大の規模を誇るトンガス国立森林公園の名称は、クリンギット・インディアンのトンガス族に由来しています。この森林公園が設立された発端は、セオドア・ルーズベルト大統領がアレキサンダー・アーキペラゴ森林保護区を設定した1902年にさかのぼります。同保護区は1908年に拡大されました。今日、676万ヘクタールのトンガス国立森林公園は、太平洋岸からブリティッシュ・コロンビアと境を接する内陸部氷原まで、そしてプリンスオブウエールズ島の南端から800km北のマラスピナ氷河まで広がっています。アラスカ南東部の80%以上はトンガスに含まれ、また無数の島々、フィヨルド、湾などを合せるとその海岸線の長さは17,600kmと、北米の海岸線総延長の約半分にも及びます。トンガスの広大な沿岸多雨林を形成する樹種としてはツガ、エゾマツ、エンピツビャクシン、アラスカヒノキなどがあります。針葉樹の巨木の下には若い常緑樹をはじめ、アメリカはりぶき、ブルーベリー、ハックルベリーなどの灌木が見られます。苔やシダ類は地面を、地衣類は多くの樹木を覆っています。
トンガス全域では野生動物が豊富におり、シトカ・オグロジカとその捕食動物であるオオカミとブラウンベアはこの公園を生息地にしています。ブラックベアやマウンテンゴート、ムースなどもよく見かけます。 ドール・ネズミイルカやネズミイルカ、ヘアアザラシ、ザトウクジラ、ミンククジラ、シャチ、そしてその頭数を増しているラッコなどの海洋哺乳類は沿岸海域で見られます。海域はハリバットや全5種類のパシフィック・サーモンで溢れています。ハクトウワシの生息数は世界中どこよりも多いと言われています。
世界最大の温帯雨林を擁するとは言っても、トンガス国立森林公園の面積のほぼ半分は氷、水、湿地、岩などに覆われています。有名な小氷原はメンデンホール氷河です。これが「ドライブイン氷河」として知られているのは、ジュノー市街地から舗道沿いにわずか21kmほどしか離れていないからです。ピーターズバーグあるいはランゲルからボートに乗れば、アメリカ大陸最南端の潮間氷河、ルコンテ氷河の正面近くに出ます。ヤクタットの48km北には、世界最長の潮間氷河であり、アラスカで最も活動的なハッバード氷河があります。全長122kmのこの氷河は、これまでに7回もラッセル・フィヨルドを超えて流れ出ましたが、一番最近は2008年のことでした。幅約13kmのこの氷河の前を流れる激流が余りに強力なため、ハッバード氷河はほぼ継続的に氷塊を分離し続けています。
トンガス公園は1,411㎢のラッセルフィヨルド・ウイルダネスをはじめとする19の原生自然エリアの他、アドミラルティ島国定天然記念物、グレイシャー・ベイ国立公園・自然保護区を含んでいますが、ヘインズやスキャグウェイ周辺の一般エリアはこの国立森林公園には含まれていません。
Facilities
施設
トンガス国立森林公園には、素晴らしいレクリエーションとそれを楽しむための施設が備わっています。 150もの森林局が管理する150もののキャビンが、森林公園全体に分散するように人里離れた湖や湾に面して建てられており、利用に際しては事前に予約(877-444-6777、518-885-3639)することができます。ほとんどのキャビンへは、水上飛行機を使わないと行くことができませんが、ジュノーでは5か所、ピーターズバーグでは1か所のみ、徒歩で行くことができるキャビンがあります。アラスカ南東部の多くの町や村には、森林局管理のキャンプ場が少なくとも1つはあり、道路から離れた静かで美しい場所に素朴なキャンプ施設が広がっています。
公園内のハイキングでは、びっしりと生い茂った森、高山性の草原、整備されたトレイルに沿って広がるマスケグと呼ばれる泥炭の沼地に架かるボードウォークなどを楽しむことができます。ジュノー地区では、米国森林局が20以上のトレイルを整備しており、このうち5つは氷河が終着点となっています。中でもメンデンホール氷河沿いのウェスト・グレイシャー・トレイルは、南東アラスカにおける最も景色の素晴らしいハイキング・コースの一つとして知られています。
その他のアクティビティとしては、プリンス・オブ・ウェールズ島でのレンジャーのガイド付きエル・カピタン洞窟探検ツアー、トレーシー・アーム - フォーズ・テラー・ウィルダネスのカヤックの他、アドミラルティ島の一群の湖を、カヌーを用いて水陸交互に巡るツアーなどがあります。
また、ベア・ウォッチングもトンガスでは大変ポピュラーです。サーモンの産卵シーズンになると、ハイダー近くのフィッシュ・クリーク、ランゲル近くのアナン・クリーク、アドミラルティ島のパック・クリーク、ジュノーのメンデンホール氷河にあるスティープ・クリークといったベア・ウォッチングのスポットには、多くの人が押し寄せます。さらに、それと同じくらいに人気があるのは移動するザトウクジラを観察するホエール・ウォッチング・ツアーです。ジュノー、シトカ、ピーターズバーグなどでは、チャーター・ボートによる様々なツアーが実施されています。一方、森林局の説明要員スタッフはアラスカ・マリンハイウェイに乗り込み、クジラをはじめとする野生動物発見の手助けをしてくれます。
アラスカ南東部各地には米国森林局の事務所があり、トレイル、キャンプ場などの情報や、地域内の催し物に関する情報や地図を提供している他、次の3か所の森林局ビジター・センターでは、様々な興味深い展示を行っています。
• ケチカンの南東アラスカ・ディスカバリー・センター(907-228-6220)
• ジュノーのメンデンホール氷河ビジター・センター (907-789-0097)
• ピーターズバーグ・ビジター・インフォメーション・センター (907-772-4636)
Fees
入園料
メンデンホール氷河ビジター・センターと南東アラスカ・ディスカバリー・センターは、入場料が必要です。 キャンプ場、森林局管理キャビンの利用には、1泊毎の料金が、また一部のプログラム、許可証にも料金が必要となります。
Accessibility
アクセス
南東アラスカのほとんどの場所には主要道路はありません。シトカ、ケチカン、ピーターズバーグ、ランゲル、ジュノーに向けては、シアトル、アンカレジから毎日ジェット便が運航されています。また、他のアラスカ南東部各地の小さな町には、エアタクシーの定期便が運航されています。さらに、年間を通じて、南東アラスカの多くの町とワシントン州べリングハムやカナダのブリティッシュ・コロンビア州プリンス・ルパートとを結ぶアラスカ・マリンハイウェイが運航されています。