ランゲル・セントアライアス国立公園・自然保護区は、米国の国立公園システムの中でも最大の構成単位で、そのトレードマークとなっている高峰や巨大な氷河は壮観そのものです。1980年に国立公園に指定されたランゲル・セントアライアスは、アラスカの南部中央に528万ヘクタール.を占めています。カナダのクルア二国立公園に境を接しており、両方を合わせると総面積は800万ヘクタールにも及び、現在世界に残されている中では最大級の公園・自然保護区地帯となります。このため2つの公園は1979年にユネスコの世界遺産に認定されまました。
ランゲル・セントアライアスでは4つの大山脈 – チュガッチ、ランゲル、セントアライアス、そしてアラスカ山脈の東端 – がイエローストーン国立公園を6つ合わせたエリアの中に集中し、山々の十字路を成しています。セントアライアス山脈は公園の中心部でランゲル山脈と合流した後、カナダ国境を越えて東方へ弧を描くように延び、そこで世界で最も高い沿岸山脈を形成します。公園の区域内には米国の最高峰上位16の内9つがそびえています。米国第2の高峰、セントアライアス山(5492m)、ボナ山(5008m)、ブラックバーン山(4999m)、サンフォード山(4952m)などです。公園の地勢は氷(河)に覆われた山々の頂から北の方へと下っていき、樹木の無いツンドラや北方針葉樹林に覆われた高原へと変わります。一方南側は、山脈からの氷河がほぼアラスカ湾の潮水まで伸びています。
野生動物は、高山帯ではドールシープやマウンテンゴート、ランゲル山脈周辺から北ではカリブー、沼地ややぶの生い茂る低地ではムースなどの姿をみることができます。 1950年にバイソンがカッパーリバー・バレーに、そして1962年にはチティナリバー・バレーに放たれた結果、残存するバイソンの群れが今日もこれらの地域で見られます。ブラックベアやブラウンベアは公園内の随所で歩き回っています。チティナから96kmの範囲内では、マッカーシー・ロードがケニコット川にかかる歩行用の橋で終わります。向こうには、この公園の見どころのひとつで国定史跡でもあるケネコット鉱山町の跡がありますが、今では人影はありません。1900年に、ここで銅が発見されると、裕福な投資家たちがケネコット鉱山会社(事務系社員がケニコットのスペルを間違ってケネコットとしたのがそのまま社名になりました)を設立し、カッパーリバー&ノースウエスト鉄道(有名なミリオンダラー鉄橋を含む)を建設して会社の鉱山町、ケネコットを造りました。この鉱山は1911年から1938年までの間に1億ドル以上もの生産をあげ、米国の歴史にも特筆される大鉱脈となりました。この企業町ではギャンブルも飲酒も禁止されていたため、鉱山労働者が酒場、レストラン、ホテルや賭博場で「酒と女と歌」にありつけるよう、近くにマッカーシーの町がすぐに生まれました。今でもケネコットやマッカーシーには当時の建物が残っており、20世紀初頭の銅鉱山町の様子を彷彿とさせています。
鉱山町探訪以外にも、アクティビティとしてはバックパッキング、ハイキング、マウンテンバイク、バードウォッチング、キャンピング、スポーツ・フィッシング、登山、アイス・クライミング、野生動物観察、遊覧飛行など様々です。冬季にはクロスカントリー・スキー、スノーモービル、スノーシューなどが楽しめます。
Facilities
施設
デナリ国立公園や米国の他の伝統的な国立公園に比べると、ランゲル・セントアライアス国立公園・の施設とサービスには限りがあります。ランゲル・セントアライアス国立公園ビジター・センター (907-822-7250)は、クーパー・センター付近のリチャードソン・ハイウェイ170㎞地点にあり、ビデオ上映や自然史に関する展示物、大型3D画面による地図の展示物などの他、書籍店もあります。また、ビジター・センターから自然道の歩いて行くと、ランゲル山脈の素晴らしい景観を望むことができます。
ケニコット・ミル・タウンの歴史ある列車の駅には、公園が管理するケニコット・ビジター・センター(907-554-1105)が併設されており、地図やパンフレットなどを入手できる他、歴史的な展示品の数々やレンジャーがガイドする歴史的散策ツアーにも参加することができます。その他のビジター・センターとしては、エジャートン・ハイウェイの終点にあるチティーナ・レンジャー・ステーション(907-823-2205)、マッカーシー・ロードの95㎞地点にあるマッカーシー・ロード・インフォメーション・ステーション、ナベスナ・ロードの起点にあるスラナ・レンジャー・ステーション(907-822-7401)などがあります。
ランゲル・セントアライアス国立公園には管理が行き届いたトレイルはほとんどありませんが、古い鉱山道や歴史ある馬車道をはじめ、内部へと通じるユニークな道が通っています。離れたキャンプサイトに行くにはブッシュ・プレーン(軽飛行機)が必要となりますが、ディキシー・パス、ナゲット・クリーク、ボナンザ・マインの3つのルートは、マッカーシー・ロードから行くことができます。また、ランゲル・セントアライアス国立公園には13の公共キャビンがあります。キャビンのほとんどは、かつて鉱山労働者や狩猟者が使用していたものですが、現在は国立公園局により修復が施されています。全ての人が利用可能なこれらのキャビンは先着順となっておりますが、軽飛行機でのアクセスが必要となります。
ランゲル・セントアライアス国立公園で、さらなる冒険を体験したい方には、ガイド付きのツアーを手配してくれる業者がたくさんあります。氷河ウォーキングや川でのラフティング、そして標高の高い公園の中心部に降ろしてくれる遊覧飛行ツアーなど、様々なアクティビティをお楽しみ頂けます。
Fees
入園料
ランゲル・セントアライアス国立公園・自然保護区や各ビジター・センターへの入場、レンジャープログラムへの参加は全て無料です。
Accessibility
アクセス
クーパー・センター近くにあるランゲル・セントアライアス国立公園ビジター・センターは、アンカレジからはグレン・ハイウェイを利用して、またフェアバンクスやバルディーズからはリチャードソン・ハイウェイを利用して行くことができます。広大な公園へと通じる道は、わずか2本の舗装されていない道路のみです。 ナベスナ・ロードの67㎞地点からは公園の北側に、そしてマッカーシー・ロードの96㎞地点からは公園の中心部に到達することができます。地元のエアタクシー、遊覧飛行ツアーは、グレナレン、マッカーシー、チティナにある滑走路から飛び立ちます。その他、グレナレンとマッカーシーを結ぶ定期小型シャトルバスも運行されています。